イパーオキシア(Hyperoxia)
■ 説明:
- 血中の 酸素濃度が高すぎる状態。高圧環境での高酸素吸入によって起きる。
- 酸素毒性のリスクを伴う。
■ 症状:
- 視野の狭窄
- けいれん
- 吐き気
- 意識喪失(酸素けいれん)
■ ケーススタディ:
ナイトロックス(酸素濃度の高い気体)での深度オーバー
- ナイトロックスのMOD(最大作業深度)を超えて潜った結果、酸素分圧が1.6ATAを超える。
- 数分のうちに酸素毒性によるけいれんを発症。
- 意識を失い、レギュレーターを口から外すことで溺水に繋がる可能性。
ハイパーオキシア(Hyperoxia)関連事故
■ 事故例:ナイトロックス使用中の酸素中毒発作(レクリエーションダイビング)
- 場所:タイのダイビングクルーズ
- 状況:
- ダイバーが**EAN36(酸素36%)**で深度40m以上まで潜水。
- 潜水中盤で突然のけいれん発作を起こし、レギュレーターが外れる。
- バディが救助したが、溺水によって死亡。
- 原因:
- 酸素分圧が1.6ATAを超えていたため、**酸素毒性(中枢神経系)**が発生。
- 教訓:
- ナイトロックス使用時は**MOD(最大作業深度)**を厳守すること。
- 酸素中毒は予兆がなく突然発生するため、非常に危険。
過去の酸素中毒(ハイパーオキシア)による実際の事故報告をもとに、「MODからどれだけ深度をオーバーしていたか?」を具体的に示します。
✅ 過去の事例とMODオーバーの実際の深度超過
### 🧪【事故例①】EAN36使用、酸素中毒発作で死亡
- 発生国:タイ(レクリエーショナルクルーズ)
- FO₂(酸素分率):0.36
- 潜水深度:40m
- MOD(1.6ATA基準):34.4m
- 酸素分圧(PO₂):1.8 ATA
▶ MOD超過深度:+5.6m(約16.3%オーバー)
▶ PO₂超過:+0.2 ATA(12.5%)
🧪【事故例②】EAN32使用、テックレック潜水中のけいれん
- 発生国:アメリカ(沈船ダイビング)
- FO₂:0.32
- 潜水深度:42m
- MOD(1.6ATA):40m
- PO₂:0.32 × (42÷10 + 1) = 0.32 × 5.2 = 1.664 ATA
▶ MOD超過深度:+2m(5%オーバー)
▶ PO₂超過:+0.064 ATA(約4%)
▶ ※このダイバーは軽いけいれん後、浮上して無事
🧪【事故例③】EAN40でのトレーニング中発作(意識喪失)
- 国:オーストラリア、テック講習中
- FO₂:0.40
- 潜水深度:30m
- MOD(1.6ATA):(1.6/0.40 - 1) × 10 = 30m
- PO₂:1.6 ATA
▶ 深度的にはちょうどMODだが、水温低下+ストレスで発作
▶ ※MOD内でも安全マージンのなさが危険因子になった事例
🧪【事故例④】EAN36、43mで死亡(高圧酸素中毒)
- FO₂:0.36
- 潜水深度:43m
- MOD(1.6ATA):34.4m
- PO₂:0.36 × 5.3 = 1.908 ATA
▶ MOD超過:+8.6m(25%オーバー)
▶ PO₂超過:+0.308 ATA(+19.3%)
▶ ダイバーは水中で突然けいれん、レギュレーター脱落 → 溺水死亡
✅ 統計的に見た傾向:
- MODのオーバーは「2〜8m」が多い
- PO₂ 1.7〜1.9 ATAの範囲で事故が起きている
- 酸素中毒は発症に個人差が大きく、前兆がなく突然起こる
- 事故例の多くは「酸素分圧を軽視した結果の慢心」または「誤計算・ガス管理ミス」
🛑 安全のための現実的ガイドライン:
使用気体 | 推奨PO₂上限 | 安全MOD目安 | コメント |
---|---|---|---|
レクリエーション(EAN) | 1.4 ATA | FO₂に応じたMOD | 安全マージンを残すべき |
テック・短時間作業 | 1.6 ATA(最大) | 厳密に守る | それ以上は即リスク |
酸素100%(加圧酸素停止) | 1.6 ATA | 6m以下 | 深度超過=酸素けいれん |